ケリング・ファウンデーションは、米国(National Network to End Domestic Violence)、フランス(Fédération Nationale Solidarité Femmes)、イタリア(Donne in Rete contro la violenza)、英国(Women's Aid)、メキシコ(Red Nacional de Refugios)の各団体と協力し、暴力を受けた女性サバイバーの個々の事情に合わせたリソースで包括的な支援を提供しています。
画期的なパイロット・プログラムを推進する
ケリング・ファウンデーションは、2016年にフランスのサン=ドニで創設されたLa Maison des femmes de Saint-Denisを設立当初から支援しています。この女性支援センターは、医療支援だけでなく、心理的、感情的、精神的、身体的なサポートなど、他にはない包括的なサービスを提供しています。同センターには婦人科医、心理学者、警察官、弁護士など、多様な経歴を持つ60人のプロフェッショナルが集まり、共にサバイバーの声に耳を傾け、ケアし、支援や指導を行っています。2021年6月にUN Women、メキシコ政府、フランス政府が共同で開催した「平等を目指す全ての世代フォーラム(Generation Equality Forum)」において、フランソワ=アンリ・ピノーはケリング・ファウンデーションを通じてフランス政府と共にLa Maison des femmes de Saint-Denisをモデルとしたセンターをフランス国内の15カ所で開設する資金として、5年間で500万ユーロを支援すると発表しました。
社会起業家のコミュニティを活性化する
ケリング・ファウンデーションは、女性のエンパワーメントにおいて社会的企業が重要な役割を果たすと確信しています。同財団は、社会起業家のコミュニティと連携し、女性サバイバーに支援と職業訓練を提供しています。コミュニティの各メンバーはインキュベーション・プログラムに参加し、またファウンデーションが提供するネットワークや1対1のメンタリングを活用しています。さらに、社会的企業は女性により良い形で貢献するための先進的なビジネスモデルの開発を目的としたグループワークショップにも参加しています。なお、このコミュニティは、イタリアのColori Vivi、英国のChayn、メキシコのGendesとLas Panas、フランスのDu Pain & des Rosesを含む9団体のメンバーで構成されています。
草の根組織を強化する
社会の変革はコミュニティの中から始まります。このため、ケリング・ファウンデーションは、女性に対する暴力と闘う地域の草の根組織を認定している5つの女性向け基金に資金を提供しています。その代表的な例がRosa UKです。ケリング・ファウンデーションはこの基金を通じて、英国で最も長く運営されているレイプ被害者救援センター、Glasgow & Clyde Rape Crisisを含む3つの団体を支援しています。また、残りの5つの活動国でも地域コミュニティと密接に連携するため、フランスとイタリアのMediterranean Women’s Fund、香港のHER Fund、メキシコのFondo Semillas、米国のWomen Foundation of Californiaと協働しています。
米国では、New York City Alliance Against Sexual Assault(NYCAASA)と同団体のプロジェクトである「Dream, Own, Tell(Project DOT)」を支援しています。これは公的なサービスが不十分な地域の若者たちとともに取り組んでいる性暴力防止プログラムで、特にリーダーシップに重点を置き、画期的な変化をもたらしています。Project DOTは、従来の性教育プログラムを受けられないことが多い参加者に対し、ポジティブなメッセージを作成し、コミュニティで共有するためのプラットフォームを提供しています。同団体は2025年までにニューヨーク市内でさらに4つの地区をターゲットとしたトレーニングセンターを設立し、プログラムの効果を高めていく予定です。
暴力の世代間連鎖を断ち切る
世界保健機関(WHO)によると、女性の20%、男性の5%~10%が子どもの頃に性的虐待を受けています。そのうちの80%は近親相姦の被害者です。この許し難い現実を受け、ケリング・ファウンデーションは2019年にLa Maison des femmes de Saint Denisを支援し、幼少期に虐待を受けた成人のケアに焦点を当てた新しいユニットを設立しました。この女性センターは2021年に229件のコンサルテーションを行いました。また、ケリング・ファウンデーションはフランスの団体Face à l'Incestを支援し、団体の知名度向上とコミュニケーションの強化に取り組んだほか、Louie Mediaが制作するポッドキャスト「Ou Peut-être une nuit」を支援し、近親相姦を黙殺する状況の打破に取り組んでいます。
2018年、ケリング・ファウンデーションはFondation Agir Contre l'Exclusion(FACE)と協力し、女性に対する暴力撲滅に取り組む16社によるヨーロッパ初のネットワーク、One In Three Womenを設立しました。このネットワークは、啓発ツールキット、7つの言語で利用できるオンライン学習、社内研修プログラムを通じて、家庭内暴力のサバイバーである職場の仲間をサポートするよう企業に働きかけています。One In Three Womenは2019年に6カ国の6企業、4万人の従業員を対象にした調査を実施しました。その結果、調査に参加した女性の16%、男性の4%が家庭内暴力を経験したと回答したことがわかりました。さらに、被害者の37%がすでに同僚にこの問題について話し合ったことがあると答えています。このような結果を受け、各企業は家庭内暴力を受けた従業員を支える職場環境の確立と具体的な対応を率先して進める、主導的な役割を果たしています。
外部の組織を暴力撲滅の取り組みに参加させる
UN Womenの呼びかけにより、ジェンダー平等のための世界的な集まり「2021年平等を目指す全ての世代フォーラム」がパリで開催されました。ケリング・ファウンデーションは「ジェンダーに基づく暴力に関する行動連合」の民間セクターのリーダーとして、2026年までに完了を目指す5つのコミットメントを掲げました。同財団はOne In Three Womenのネットワークを通じて民間企業のリーダー50人に働きかけ、家庭内暴力の被害にあった従業員を支援するための社内方針および手続きを導入、実行させることを約束しています。